過酷な「らくらくホン」開発現場

時速300キロに耐えろ・ドコモ「らくらくホン」の楽ではない実験現場

 初心者向けケータイとして高い認知度を誇るNTTドコモの「らくらくホン」。操作が簡単という「使いやすさ」に加えて「聞きやすさ」にもこだわりの開発が進んでいる。意外な場所で行われている意外が実験を見に行った。(石川温のケータイ業界事情)

 らくらくホンは様々なノイズキャンセル技術などを搭載し、周辺が騒音でうるさい状況でも聞き取りやすい通話を実 現している。その実験環境のひとつとなっているのが、国内最高峰のモータースポーツである「フォーミュラ・ニッポン」だ。時速300キロメートルを超える フォーミュラマシンに乗るドライバーとピットをFOMAの音声回線で結び、チーム監督からドライバーに指示を飛ばしている。

 果たして、レースの現場でどのようにらくらくホンが使われているのか。8月9日、栃木県の「ツインリンクもてぎ」で開催された「フォーミュラ・ニッポン第6戦」の現場を取材した。

■過酷な状況が格好の実験室

 フォーミュラ・ニッポンは国内最高峰のモータースポーツで、年間8戦で全11チームがチャンピオンを争ってい る。ドコモは1999年から「DANDELION RACING」というチームのスポンサーとなり、「F-PROJECT通信実験」としてPDCやFOMAといった機器をマシンに搭載し、様々な通信実験を 行っている。

 ドライバーとピット間の音声通話だけでなく、マシンにセンサーを搭載し、走行距離や速度、エンジン回転数などを 計測。FOMAのデータ通信回線を経由して一般ユーザーがリアルタイムで確認できるように情報を配信している。また、マシンの上部にケータイを乗せ、テレ ビ電話としてリアルタイムの映像も配信している。

 「高速走行や急加速、急ブレーキなど、フォーミュラ・ニッポンの過酷な状況は実験としては最高の環境。サーキッ トをぐるぐる回るので、効率的なデータ収集も可能です。ケータイ端末とネットワークの双方から、様々なデータ収集を行っています」(ドコモのユビキタス サービス部ユビキタスサービス企画、川端茂樹フォーミュラPT担当)。

■「はっきりボイス」が大活躍

 通常、レース中にピットとドライバーは無線を使って会話をしている。何周目にピットに入ってタイヤ交換や給油をするのかといったレース戦略を常にやりとりしているのだ。

マシンに搭載されているらくらくホン ベーシック。実際にはアンプを経由してドライバーのヘルメット内にあるマイクと、イヤホンに声が伝わるようになっている

 現在、DoCoMo TEAM DANDELION RACINGではマシンに「らくらくホン ベーシック」を搭載。ピット側も同様にらくらくホン ベーシックが設置され、両者の会話をFOMAの音声回線で結んでいる。

 「らくらくホンは、昨年のシーズン中盤から試し始め、今シーズンから実践投入を行っています。周辺の騒音と人間の声を識別して、ドライバーがピットからの声を聞きやすく、またドライバーの声がピットに届きやすいようになっている」(川端氏)という。

 フォーミュラマシンでは、3000ccV8気筒エンジンの騒音だけでなく、ヘルメットに当たる風の音など、様々なノイズが存在する。そこで、らくらくホンの「はっきりボイス」という機能が大活躍し、雑音のなかでも声が聞きやすいようになっている。

 搭載されている端末は市販されている「らくらくホン ベーシック」と同じものだ。しかし、フォーミュラ・ニッポンの環境に合わせて、ノイズキャンセルの設定などはチューニングが行われているという。

マシンのステアリング。中央にはコース図が貼られている

ステアリングの拡大写真。「Talk」ボタンを押すことで、ピットに対してしゃべることができる

■細かな情報を随時ピットとやりとり

 実際、チーム監督やメカニックが装着するヘッドセットを借りて、レース中のピットとドライバーとの会話を聞かせてもらった。

 レース中、常にドライバーとピットが頻繁に会話しているかと思ったが、実際はそれほどでもなかった。レースの戦略などは予めミーティングによって決められているため、両者が会話するのは状況が変化したときが中心だ。

レース前には通信担当メカニックが音声通話がきっちりと使えるかどうかの確認を行う。万が一、レース中に通信手段が途絶えると、上位入賞も難しくなる可能性がある

レース中のピットの様子。チーム監督などはヘッドセットを使い、ドライバーに指示を飛ばしている

決勝第2レース、ポールポジションだった土屋武士選手はスタートを失敗し、残念ながら入賞できずに終わった。写真提供:ツインリンクもてぎ

  第6戦の決勝第一レースでは、他のドライバーが大クラッシュしたため、一時、セーフティーカーと呼ばれる先導車が入り、スロー走行となった。すぐさま、 ピットから「第5コーナーで平手(ドライバーの名前)がクラッシュ。セーフティーが入る」とか「コース上にクラッシュしたときの破片があるので、気をつけ て走行せよ」といった内容の指示がドライバーに伝えられる。

 ツインリンクもてぎは1周4.8キロメートルのコースだ。当然ながら、走行中のドライバーは前と後ろの状況しか 把握できない。どのコーナーがどんな路面状況になっているのか、誰が立ち往生しているのか、前後のマシンとはどれくらいのタイム差になっているのか、と いった細かな情報が随時、ピットからドライバーに伝えられるのだ。

 一方、ドライバーからも、仲間がクラッシュしたこともあり、「彼は大丈夫なのか」という安否を問う心配そうな声が聞こえてくる。ドライバーを落ち着かせて、レースに集中させるのもチームの役目なのだ。

■今後は「ダブルマイク」も

 実は4、5年前にも、フォーミュラ・ニッポンにおけるドコモの取り組みを取材したことがある。そのころはPDC(確か三菱電機のD211i)でドライバーとピットの通話を行っていた。当時と比べると、通話品質は格段に向上しているように思えた。

 実際、「年々、通話品質は向上している」(通信担当メカニック)という。過去にもノイズキャンセル技術が試され ていたことがあったが、そのときはドライバーの声色に合わせてチューニングが必要だったという。しかし、らくらくホンになったことにより、細かな調整が不 要になりつつあるようだ。

 らくらくホン ベーシックはひとつのマイクでノイズキャンセルを行っているが、先ごろ発売されたらくらくホン Vでは「スーパーダブルマイク」により、2つのマイクでノイズキャンセルを実施している。

「現在はベーシックを搭載しているが、今後はダブルマイクにも取り組んでいきたい」(川端氏)とのことだ。

■重量配分を考えながら搭載機種を選別

マシンサイドに搭載されたケータイたち。一台のマシンにかなりの台数のケータイが乗っていることになる

  実はマシンには、公開されている実験内容以外にも、複数のケータイが搭載され、各端末の通信状況の試験が行われているのだという。チームは40号車と41 号車の2台のマシンをレースに参戦させているが、40号車には音声通話用のケータイ以外にも「F906i」「N906iμ」「SH906i」 「P906i」など4台のケータイが試験用として搭載されていた。

 「レースの邪魔にならないよう、搭載する機材はチームと話し合いを進めながら決めている」(鈴木淑人フォーミュラPT担当課長)。

 マシンの重量やバランスによっても走りに影響を及ぼしかねないだけに、搭載する機材の重量などにも気を配る必要があるという。

 時速300kmの走る実験室で、ドコモのケータイは進化しているのだ。

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iPhoneやGoogle Android搭載携帯に注目していましたが、ドコモの国産携帯の「らくらくホン」の開発現場に注目してみました。サーキットで実験をしてるとは、本当に過酷な実験ですね。国産メーカーの地道な努力が、iPhoneやGoogle Androidの前に吹き飛んでしまうことは無いでしょうか?国産携帯電話にもエールを送りたいです。

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このページは、ownerが2008年8月28日 20:03に書いたブログ記事です。

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